やることがある

クレヨン牧師のミニエッセイ

『やることがある』
 死刑囚達の記録だけを集めた本があります。裁判で死刑の判決をうけ、絞首台の階段を上るまでの、ある者にとっては長い、またある者にとっては短い「待っている」時間の記録です。
 
 その中に一人の男の記録がありました。その男はある日突然、花を生けはじめたのでした。といっても、単に粗末な花瓶に一輪の花を生けはじめたのです。しかしそれ以来、死刑囚特有の無気力な凶暴さからうってかわって、見違えるほどに元気になったそうです。死刑の直前、その訳を尋ねた看守に、その男は言いました。「仕事がある。明日起きたら花ビンの水を取り変えるという仕事がある。夜寝るとき私はそう思いました。だから少なくとも明日は生きていける」と。
 
 笠戸島へいく道路を車で走っていますと、日立の工場への引き込み線をわたります。ふと見ると線路のなかに、秋桜が咲いていました。いつかはこの線路の上を新品の電車が通る。すると花はなくなってしまいます。しかし、それでもそこに咲いていることに神様の意味があるのでしょう。

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